ナースの適性が高く、研修制度も充実している治験業界

育児休暇などの福利厚生が充実している企業が多いです

私たちの健康を支える様々なお薬の安全性と効果を調べるための臨床試験を「治験」といいます。近年は、新薬を開発する製薬会社から治験業務を受託するCRO(医薬品開発業務受託機関)や、治験を実施する医療機関のサポートを行うSMO(治験施設支援機関)の求人も多くなっています。

具体的には、治験が適正に行われているかチェックするCRA(治験モニター)や、医師、被験者、依頼者の間に入って治験を円滑に進めるCRC(治験コーディネーター)として働くことになります。

もう少し詳しく見てみましょう。治験モニター(CRA)は治験を実施する医療機関および担当医師に関する適合性の調査、スケジュールや契約の確認、スタッフへの説明会の実施、プロトコル(実施計画書)に沿って治験が行なわれているかの監視、症例報告書の回収、終了後の確認作業を行うなど、その仕事内容は多岐にわたります。

医療機関を実際に訪問して、治験が適正に行なわれているかどうかをチェックしますので、新幹線や飛行機などを使った出張もあります。ただし、子供が小さいうちは内勤の職務に配置してくれるなどの配慮をしてくれる企業もあります。

一方、治験コーディネーター(CRC)は治験に参加するボランティアに対するサポート、医師の支援、依頼者との対応など、正しく治験が行われるように被験者、医師、そして依頼者の間に入って全体をコーディネートして調節を図る役割を担っています。

CRA・CRCの仕事は、採血や点滴などの医療行為は基本的にありませんが、医療現場に非常に密接しているお仕事で、高いコミュニケーション能力とチームワークが問われますので、看護師は治験専門職への適性が高く、実際に多くのCRA・CRCが、看護師をはじめ薬剤師・MRなど医療業界からの転職組です。

20代後半~30代前半で実務経験が3年以上ある方ならば、未経験者の採用を積極的に行う企業が多く、教育・研修制度も充実しています。また、殆どの企業が、日勤帯のみで土・日曜日がお休みの勤務体制になっているのも安心です。ただし、企業の所在地は東京もしくは大阪がほとんどですので、応募できる方の地理的な条件が限られてくるのがネックです。

医療関連職をバックグラウンドに持つ方が多いので、業界における女性の占める割合は高くなっています。そのため、女性が長く仕事を続けられる環境を整えた企業が多いのが特徴といえます。ナースの資格を活かして、違う世界で働いてみたい方にはメリットの多い業界ですので、興味のある方は定期的に開催されている企業のセミナーなどに参加してみてはいかがでしょうか。

看護師からの転職組が多い治験モニター(CRA)

製薬メーカーやCROから医療機関へ派遣されます

厚生労働省から新薬の製造販売に関する承認を取得すためには、患者さんや健康な方の協力を得て、その医薬品の効果や安全性、副作用等を調べる臨床試験(治験)のデータが必要となります。

CRAは、治験を実施する医療機関を訪問して、治験が薬事法やGCP(臨床試験の実施の基準)に従って適正に行われていることを確認し、保証する役割を担っています。
また、医療施設から治験のデータを回収・精査し、不備が認められた場合には、再度医療施設に掛け合って正しいデータが得られるようにします。

後述する治験コーディネーター(CRC)と仕事の内容が似ていますが、CRCが被験者の立場から治験の円滑な実施をサポートするのに対して、CRAは実施機関である医療機関の立場からサポートを行うという違いがあります。

CRAとして働きたい場合、国内および外資系大手製薬メーカー、製薬企業から治験業務の一部を請け負い実施する医薬品開発業務受託機関(CRO)などに入社後、各社内で実施される研修を受けるのが一般的です。

医師と接したり、カルテを読む機会が多いため、医療全般に関する知識はもとより、高いコミュニケーション能力も求められています。そのため、看護師や薬剤師、臨床検査技師からの転職組が大半を占めているのが特徴で、特に20~30歳代前半の看護師有資格者を採用している企業が増えています。

治験参加者と医師・製薬会社の調整を行う治験コーディネーター(CRC)

主な勤務先は医療機関、CRO、SMOです

厚生労働省の省令に基づいて、新薬の効果を確かめたり、既存の薬剤の追跡調査を行うため、患者や健康な人に薬を使用してもらい、その身体的データを集めることを「臨床試験」といいます。そしてこの臨床試験のうち、新薬への厚生労働省の承認取得を目的とするのが「治験」であり、治験で集められたデータは、新薬の効果と安全性を検討する資料にまとめられ、同省による承認審査を受けることになります。

治験を行ううえでなにより重要なのは、患者(被験者)の人権と安全について十分な配慮がなされることです。その前提として、治験の科学的な質と成績の信頼性が確保されていることが必須となります。

そこで厚生労働省では、日・米・欧において合意された国際基準に基づいた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」を試行しました。これが「新GCP(GCP:Good Clinical Practice)」と呼ばれるものです。

この新GCPでは、治験の依頼者(製薬会社)だけでなく、実施する医療機関や担当者に対しても、その遵守を義務付けています。そこで医療機関では新しく「治験コーディネーター」の役割をつくり、被験者の心理面や専門的知識の面からサポートを行うことになったのです。

治験コーディーネーターの主な仕事は、治験の目的やリスクなどを十分説明し、被験者がその内容を理解した上で自発的に参加することを同意してもらう「インフォームドコンセント」、被験者との面談・診察への同席、スケジュール管理、服薬指導、治験データの収集と管理、関連部署との連絡や調整など、多岐にわたります。

治験コーディネーターについている人の資格は、看護師が46.5%と最も多くなっており、次いで臨床検査技師、薬剤師の順番になっています。これは医療に関する知識だけではなく、職業の性質上、高いコミュニケーション能力が求められていることが関係しています。

主な勤務先としては医療機関、医療機関を代行して治験の支援を行う「SMO(治験施設支援機関)」、依頼者である製薬会社を代行して支援を行う「CRO(医薬品開発受託機関)」などが、その代表として挙げられます。