診療報酬改定で導入された7対1配置基準のメリットとデメリット

大都市圏と地方における地域格差が拡大

2006年度の診療報酬改定において、入院収入の前提となる看護師の配置基準が改定され、最も配置数を厚めとした「7対1」入院基本料が創設されました。7対1とは、入院している患者さん7人に対して看護職員が1人が勤務している状態のことを指しています。

7対1制度の導入は患者さん・看護師・病院にとってそれぞれのメリットがあります。
患者さんにとっては、看護師が多く配置されることにより、従来より質の高い看護が受けられます。次に、看護師の立場では、高い離職率の原因となっていた過重労働が緩和されます。実際、同制度を導入した病院では、退職者が減少したというデータがあります。最後に、病院にとっては、入院基本料の加算により、収入がアップするというメリットがあります。

しかし、大きな問題も生じています。看護師の配置を厚めした場合に限って、報酬額が高く設定されているため、配置数が手薄になるほど報酬は低くなり、15対1未満の場合は従来より約3割減と大幅なカットが設定されています。また、2006年度の診療報酬改定では、医療費をマイナス3.14%、額にして1兆円もの削減が行われたため、7対1に対応しきれない病院はダブルパンチを受けることになったのです。

そんな状況のなか、大規模な病院、とりわけ独立行政法人化で採算性が求められるようになった国立大学病院は、診療報酬点数の高い7対1基準での入院基本料算定を目指して、早い段階から大規模な採用活動を展開したため、看護師の大幅な増員に成功しました。

その一方で、大規模の病院に比べて給料や有給休暇などの待遇面で見劣りする地方の中小病院は人材確保が困難になり、同じサービスを提供していても一定数以上の看護師を配置できないために大幅な赤字となり、病棟の閉鎖や入院受け入れの縮小、診療報酬の引き下げなど、存続の危機に瀕している所も少なくありません。

地域医療の崩壊が懸念されるなか、最近は規模の大小に関わらず多くの医療機関が、24時間稼動の託児所の開設、寮の併設、復職支援セミナーの開催、実務経験を100%勘案した基本給など、「働きやすい環境づくり」をアピールして、人材の確保に力を入れています。