遺伝カウンセラーは遺伝子治療への相談・支援を行う専門職

お茶の水女子大学大学院などに養成専門課程があります

私たち人間が持つすべての遺伝子情報、いわゆる「ヒトゲノム」の解析技術の進歩に合わせて、遺伝子情報を組み込む医学が発展してきました。日本国内でも大学病院に「遺伝カウンセリング外来」や「遺伝診療外来」などが相次いで開設されています。

従来、医療機関を訪れるクライアントの相談対応には医師が当たってきましたが、遺伝に関する医療は急速に発展し、その範囲も拡大してきたため、医師だけでカウンセリングを行うには人手が足りない状況になりました。

また、カウンセリングには高度に倫理的な内容と心理的・社会的支援の知識が求められていることから、日本遺伝カウンセリング学会および日本人類遺伝学界が共同で認定する資格として、2005年より「認定遺伝カウンセラー」の制度がスタートしました。

遺伝性腫瘍、筋ジストロフィー、血友病などの遺伝性疾患の診断・治療は全国に600名ほどいる臨床遺伝専門医が行いますが、「遺伝カウンセラー」は医師とは倫理的に独立した立場で、相談者からの遺伝についての悩みや不安についての相談に当たります。

様々な疾患についての疑問や心配に対しては、問題解決に必要な病歴・家族歴などの情報収集を行ったり、遺伝子検査に関する情報提供を行うことにより、相談者が自分で問題を理解し、判断して意思決定を行えるように心理的・社会的に支援を行います。

病院などの「遺伝カウンセリング外来」では、上記の遺伝性疾患に加えて、小児の先天性異常、出生前診断、習慣性流産、高齢出産などの産科領域における相談・対応もカウンセラーの仕事となります。

さらに、遺伝医学の進歩により、多くの病気の原因遺伝子が発見された結果、高血圧や糖尿病などの生活習慣病にも遺伝子が深く関係していることがわかってきました。そのため、近年はこうした生活習慣病の体質遺伝などの不安も相談対象となってきています。

遺伝カウンセラーの仕事先としては大学病院での遺伝カウンセリング外来のほか、遺伝医療の現場におけるチーム医療、研究機関での「ヒトゲノム・遺伝子解析」の研究、遺伝子検査会社でのコーディネートなどが期待されています。

また、ゲノムの研究を応用した個々の患者に合わせた医療「オーダーメイド医療」の研究・開発が急ピッチで進められているため、この分野での的確な情報提供も遺伝カウンセラーの重要な仕事となると考えられます。

なお、遺伝カウンセラー養成専門過程を開設している大学院は、お茶の水女子大学、川崎医療福祉大学、北里大学、京都大学、近畿大学、信州大学、千葉大学、東京女子医科大学、長崎大学(50音順)となっています。